どんな本?

推し活の功罪

生きづらい世の中では、誰かにすがるしか希望はないのか
あらすじ

沈みゆく列島で、“界隈”は沸騰する――。
あるアイドルグループの運営に参画することになった、家族と離れて暮らす男。内向的で繊細な気質ゆえ積み重なる心労を癒やしたい大学生。仲間と楽しく舞台俳優を応援していたが、とある報道で状況が一変する女。ファンダム経済を仕掛ける側、のめり込む側、かつてのめり込んでいた側――世代も立場も異なる3つの視点から、人の心を動かす“物語”の功罪を炙り出す。
「神がいないこの国で人を操るには、“物語”を使うのが一番いいんですよ」
3point紹介


要点を3つに絞って紹介します
① 推し活界隈をめぐる物語
推し活ビジネスを仕掛ける人
推し活にどっぷりハマっていた人
推し活にどっぷりハマっていく人
3人の視点でストーリーが進みます。
② 推し活仕掛け人|ガンガン課金させようぜ!
沼りやすい気質の人をターゲッティングし、アーティスト信者(作中では“信徒”と表現)に仕立て上げ、熱狂的なファンを生み出す為にあらゆる施策を展開します。
③ 推し活沼り人|推しの幸せ、それが私の幸せ
ハマっていた者は「運営のいいようにされて、吸い上げられていることは分かっている」と言います。それでも推し活を辞められない。推し活だけが人との繋がりだから。
ハマっていく者は人生に悩んでいました。そんな時、運命のアーティストに出会ってしまいます。
感想文|推すことで、救われるもの

出版当初から話題で、知ってました。
家族にも早く読むよう勧められていたんですが、なかなか読む気になれず。
というのも、その当時私があるオーディション番組にハマっており、何となくこの本に『知りたくない“何か”が書かれているんじゃないか…』
という思いを抱いていたからです。
※奇しくも私がハマっていたオーディション番組は「no no girls」。作中アイドルのキャッチコピーもあれなんで、重なっちゃいました…笑
最近その熱も落ち着いたので、読んでみました。予感は当たってました。笑
めっちゃ現実すぎて怖面白かった。
推し活にハマる人の思考回路と、そこを攻略して仕掛けるビジネス側の思惑が噛み合い過ぎて。読み終わってからも、推し活ビジネスの構造について考えさせられます。
一番心が苦しくなったのは『推し活にどっぷりハマっていく人』である澄香の視点。彼女は“よくある悩み”を抱えていました。
周囲とうまくコミュニケーションが取れず馴染めない。常に周りに気を遣ってしまって、しんどい。自分のファッションや体型や考え方、周りからどんな風に見られるか気になってしょうがない、変だと思われたく無い。
将来、どうなりたいのか分からない。だから勉強に身が入らない。自分が何をしたいのか分からない。だから先のことが考えられない。
目指すべき目的地が分からない。
先が見通せないほど広大な土地だけが目の前に広がっていて、自分で進む方角、目指す場所を決めなければいけない絶望感。
そんなことより今がしんどい。
自分を確かにするものが何も無い。どう生きればいいのか。何をすれば楽になれるのか。
程度に違いはあれど、こんな風に生き方に悩むこと自体珍しくないと思います。
令和になって、あらゆる価値観に対してリベラルであるべき、が世論・マジョリティの意見になりつつある。
「良い大学を出て、一流企業に勤めて、結婚して」がスタンダードな正解ではない。そもそもスタンダードな正解が無い。どう生きたっていい。
だから迷う。周りの人と自分を比較して焦る。今が苦しくして仕方ない。藁でも良いから縋りたい。
そんな時、出会ってしまったら。
一生懸命に努力する、自分と同世代で、自分と性格が似た人と。自分を変えようと、もがき頑張っている人と。
そうなったらもう、その存在は簡単に『生きる希望』になってしまう。
推しに入れ込んでしまうまでの流れが自然すぎて、現実に重なりすぎて恐ろしい。
推し活ビジネスを仕掛ける側もしっかり描かれます。
仕掛ける側は、推し活にハマりそうな人がどんな人か分かっているんです。分かっているから、効果的な宣伝を打って、応援したい気持ちを煽動するようなサービスを展開します。
苦しくて仕方ない人が、救いを求めて無我夢中で手を伸ばしたものは、手を伸ばしたくなるように計算されたものなんです。
それで、応援したい気持ちが行き着く先は、終わりなき献金スパイラル。
“推し”を応援する手段として、準備された様々なコンテンツ、アイテム。
お金を払えば、自分の時間を使えば、推しを応援できる。推しが幸せになってくれる。推しの幸せは、私の幸せでもある。
溢れる愛を表現する為に、際限なく時間とお金を注ぎ込む。積めば積むだけ応援していることになってしまう。
ココがお金の工面の話に繋がってくるので、僕はかなりしんどくなってしまいます。
作中ではバイト増やすとか、生活切り詰めるとか、親からお金を誤魔化すとかで話が済んでますが、現実はもっとグロい気がしてしまう。
推しをお金で応援するって、ホスクラに沼ってしまう構造とかなり近い所にある気がして。
あっちは恋愛感情とかも絡むし、全く同じではないでしょうけども、そう思ってしまうと怖くて。考えすぎかもしれませんが。
何かにお金をかけること、時間をかけること自体はもちろん悪では無いです。
が、もしも現実も同じように丁寧に誘導されて、消費しているならと思うと…
まあ、信じるものが救われればいいんですかね。
でもそれって、本当の意味で救われていることになるのかしら。
ビジネス側も、推し活にハマる側も、若者によくありそうな悩みも、全て作り物っぽくない。残酷なほど現実。
自分以外の他者に救いを求めてしまうことで、この消費サイクルに巻き込まれてしまうんでしょうけども、そんなこと言うと聞こえてきそうです。
「自分が変わればいいとか、そんな話は聞きたくない」って。
めちゃくらいました。おもろかったけど、もう一度読むのはしんどいかも!!笑
特におとん、落ちすぎて見てられん!!笑
しかし読んで良かった一冊。

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