どんな本?
小学生・中学生・そして子供を持ち親になった世代、みんな悩みます
ある子はクラス全員からハブられて、ある父は息子がイジメられていることを知り…… 決断に迫られた彼らはどうやって乗り越えるのか
学生はもちろん大人にだっておススメの一冊!
あらすじ
「悪いんだけど、死んでくれない?」ある日突然、クラスメイト全員が敵になる。僕たちの世界は、かくも脆いものなのか! ミキはワニがいるはずの池を、ぼんやりと眺めた。ダイスケは辛さのあまり、教室で吐いた。子供を守れない不甲斐なさに、父はナイフをぎゅっと握りしめた。失われた小さな幸福はきっと取り戻せる。その闘いは、決して甘くはないけれど。
重松清 『ナイフ』 | 新潮社 (shinchosha.co.jp)
3point紹介
要点を3つに絞って紹介します
Point① 短編集 5つの物語と5つの悩み
5人悩みます
女子中に通うミキ。彼女は明るく元気な性格!クラスにも友達がたくさんいる!
なのに。突然でした、ある日を境に学年全体からハブられてしまいます。
真面目に仕事をこなすサラリーマン。ある日、息子がいじめを受けていることを知ります。
渦中の息子との接し方に悩み、事態に狼狽する妻とのコミュニケーションは上手くいかず、遂には自身の仕事、私生活にも歪みが出始めます。
そんな時、彼は怪しい露店で一本のナイフを見つけます。
中学生女子の好美(よしみ)。彼女は明るく楽しく学校生活を送っています。そんな好美のクラスではいじめがありました。いじめられていたのは好美の幼馴染、大輔。
好美は、学校で凄惨ないじめを受ける大輔を助けませんでした。大輔はいじめられ続けました。
その結果、一つの事件が起きます。
小学生6年生男子のひろし。彼のクラスはみんな仲良し。そんなひろしのクラスにある日、転校生がやって来ます。転校生の名前は「戎(えびす)」。
新たな仲間が増えることに浮き足立つクラスメイト達…… とは、なりませんでした。
戎はひろしをいじめ始めます。何故か、ひろしだけを。
サラリーマンの田村は四人家族のお父さん。妻は元教師の、現在は専業主婦。あとは小学生の娘と生まれて少し経つ息子。
田村は家族が好きでした。でも仕事も好きでした。
妻も仕事を一生懸命頑張っていました。二人は共働きで子供を育てていました。
田村はあるとき思いました。
夫は仕事に専念して妻は子供を育てる。朝、仕事に出かける夫を「行ってらっしゃい」と妻が見送る。そんな普通の家族になりたい、そう田村は思いました。
田村は、妻に仕事を辞めてもらいました。
ある出来事が娘の通う学校で起きます。
それをきっかけに、田村は『妻に仕事を辞めさせた』自身の判断を振り返ることになります。
Point② 悩んで、葛藤して、後悔して……
ある女の子は理不尽な現状に悩み、また別の女の子は何もできない自分に悩み、ある父は自分の下した決断に悩みます。
どうして、自分がいじめられなければいけなかったんだろう。
どうして、悩む息子に声をかけれなかったんだろう。
どうして、イジメられる幼馴染に手を差し伸ばせなかったんだろう。
みんな悩みまくります
Point③ 全世代に刺さる内容
社会人の皆さんが今まで通って来た道が物語の舞台です。必ず刺さる話があります。
ちなみに私は全話刺さりました
ぜひ読んでほしい!
読後感は爪痕と呼んで良いほど強烈に心に跡を残します。その爪痕は読んだ人によって形も違うと思います。この読後感は本小説「ナイフ」を読むことでしか手に入れられないです。
未読の方にはぜひこの読書体験を味わってほしいです!
【感想文】この小説は強烈な爪痕を心に残します
良い小説でした…… かなりくらいました。
今この記事を読まれているあなたは学生さんでしょうか、それとも社会人の方でしょうか、もしくはパパさんママさんでしょうか??
伝えたいことは『どんな方にも必ず刺さる本』だということです!
もう一つお聞きしたいのは、この小説「ナイフ」を読んだ上でご覧になられていますか?
もしまだ読んでいないのならぜひ!直ぐに読んでほしい!
ちなみに私が一番お気に入りの話は『エビスくん』です。
友だち同士でドタバタ色々あっても、小学生らしくというのか友情が元通りになるのが、読んでいて心地よかったです。
また重松作品にはしばしば登場する『いじめ』の描写についても触れたいと思います。
重松 清が描くいじめは生々しいです、リアルです。実際にそれが行われているシーンが、少ししんどい位にイメージできてしまいます。
もう一つポイントなのはそのいじめを学生という色眼鏡をかけて語るからなのか、より無垢な感じ、「ただの悪ふざけじゃん」という感じがにじみ出しており、残酷さを強く感じます。
『キャッチボール日和』は特にそのあたりの描写がしっかり描かれています
この『キャッチボール日和』の回は、あくまで被害者側の目線ではないです(加害者側)。そうゆうこともあり、読み終わった時の気持ちはなんとも表現しにくいものでした。
いじめから目を背けることは罪である一方、いじめを受けている当事者でない場合は向き合うことも難しい。それでも後からきちんと『その時起きたいじめ』と向き合えば許されるのか、といえばそんな単純なものではありません。心に残った傷は一生消えません。
だから、『キャッチボール日和』の回は特にモヤモヤしました。スッキリと登場人物みんなの幸せを願う事も出来ない。かと言って、理想の終わりもない。いじめは始まった瞬間からハッピーエンドが無いなあとむなしくなりました。
同じく青春時代を描いた重松 清の名作「きみの友だち」についても、合わせて紹介しておきます。
この小説を読み終えた私は、心に残った爪痕をそっとなぞってみるのです。
指をくわえて錆の味を確かめた、『あのサラリーマン』のように……
本編を読めば意味がわかります!笑
いい小説でした! ぜひ(; ・`д・´)