どんな本?
何をやっても上手くいかないダメリーマンが、文章一本で会社を動かします
仕事をする人、毎日働く社会人に刺さる一冊!
あらすじ
普通の人ができていることがうまくできない――アラサー男子・紙屋がなんとか就職できたのは老舗の製粉会社。しかし配属された総務部では、仕事のできなさに何もしないでくれと言われる始末! 紙屋は唯一の特技、文章を書くことですこしずつ居場所を見つけるが、一方で、会社は転換期を迎え……。
会社を綴る人 朱野帰子(著/文) – 双葉社 | 版元ドットコム (hanmoto.com)
3point紹介
要点を3つに絞って紹介します
Point① 限界ダメ男、社史に感動する
アラサー男子、紙屋。
彼は最近、派遣先をクビになりました。
何とか食い繋ぐ為に就活に取り組み、奇跡的に内定を獲得します。
入社した会社は、最上製粉株式会社。パンなどを製造販売する会社です。そして配属先は総務課。
志望理由は前代未聞の、「社史に感動したから」。
自分の会社の社史なんて、目を通したことがある人が一体どれ位いるのでしょうか…
何とか入社したものの、紙屋の苦労はここからが本番でした。
なにせ、何もできない。
電話をとることも、終電で上司を送ることも、コピーを取ることさえも、出来ない。
そんな彼が、何故、わざわざ、頑張って就職したのか。
それは食い繋ぐことだけが目的ではありませんでした。自分の家族をこれ以上心配させない為でした。可哀そうなことに、紙屋を除く親族、父、母、兄はみんな、優秀な家族だったんです。
エリートファミリーの落ちこぼれ、、これはキツイ……
そんな訳で、何とか就職した紙屋なのでした。
Point② 文章を書くことだけは、人よりちょっと好き
就職したものの、スキルが突然伸びるわけはなく、やはり仕事ができない紙屋。しかし、個性豊かなプロパー社員たちは容赦なしです。
シゴデキ女子の榮倉さん、ハチャメチャ部長の渡邉さんなど、彼らは氷山の一角ですが、文字通り、社員たちとのやり取りに紙屋は四苦八苦します。
何とか紙屋は頑張ろうとしますが、仕事の出来は相変わらず。間違って共有ファイルを消しちゃったり、継ぎ足しの関数をdeleteしちゃったりします。
関数消されたら、発狂もんです
しかし、日々、数々の業務を失敗する中で紙屋はあることに気付きます。
書く事なら、ちょっとだけ、他の人より得意かもしれない
ここでエリート兄貴の言葉が紙屋の頭の中で響くんです。
どんなつまんない取り柄でも一つあれば、会社でやっていけるもんだ
そうして、紙屋は社員たちの心を動かすべく、一生懸命業務に取り組みます。
Point③ 議事録の持つ力
作中で印象深かったシーンがあります。議事録の持つ力について語るシーンです。
議事録として残された事実が正になる。
歴史みたいな話ですが、思わず「確かにな…」と頷きながら読んでました。小説の中では、この議事録の力は使いようによっちゃ、悪用することもできちゃうよね……なんて話になるんですが、実際に読んで欲しいので詳細は割愛します。
本小説は、社内メールやら、議事録やら、会社で仕事をする人なら誰しもが「あるある~」となる内容で盛沢山となっております。社会人の方に特に読んで欲しい……
【感想文】紙屋にきっと勇気づけられます
何とも地味な書き出しなんです。
主人公たる人間が物語の冒頭から社内周知メールを作ることに頭を抱えています。
三時間も。
ある意味、インパクトはありますね
しかしながら、三時間とは言わずとも、社内メールに頭を悩ました経験がある方は、一定数いるのではないでしょうか。
なぜこんな話をするのかというと、私自身、紙屋と同じ総務部門で働いた経験があるからです。だから紙屋が気にする部分もちょっと共感できるんですよね……
そして、会社員として働いていて、かつ文章を書くのが好きだという紙屋のパーソナリティは、読んでいて親近感が湧きました。
「ちょっとめっちゃこの本面白いかもしれない…」と思いながら読み進めていると、気付いた時には残り半分。あっという間にぜんぶ読み切っちゃいました。
この小説、胸の奥がアツくなりました……
まさか、書き出しが社内メール三時間悩みという物語で、こんな想いを抱くことになるとは…
決して、某沢直樹のような、逆転劇、サクセスストーリーではないかもしれません。
しかし、何でしょう、この沸々と心が湧いてくる感覚は。一生懸命、どうすれば相手に伝わるか、頭を悩ませる紙屋、その姿にグっとくるんですよね。
こんなにもこの小説に惹きつけられた理由は分かっています。作中と同じように言うと、
自分が大事にしているものについて書いてある文書ならば、皆、真剣に読むのだ。
ということです。僕が大事にしているものがこの小説の中にあったようです。
ところで、バリバリ営業マンの方がもしこの小説を読まれたら、テーマ設定を鼻で笑っちゃうかもしれません。
そんな鼻で笑ったあなたに伝えたい、こんな世界があるのです。
僕らも、一生懸命働いているのです。
もう一つ補足です。この本、ある意味ノンフィクション小説だろう、と感じました。
一歩引いて見ればあり得ないストーリーです。しかしどうゆうわけか、不思議なリアルみを感じるからです。是非読んで、感じて欲しいです。
こちらの小説、会社員の方にめちゃおススメです。
が、特に、コーポレート部門(さらに特に総務部門)で働いた経験がある人に読んで欲しいです。
読み終わった後にアツくなれます。
ぜひ(^^)/