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新川 帆立「元彼の遺言状」|あらすじと読書感想文

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あらすじ|

「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という奇妙な遺言状を残して、大手製薬会社の御曹司・森川栄治が亡くなった。学生時代に彼と3か月だけ交際していた弁護士の剣持麗子は、犯人候補に名乗り出た栄治の友人の代理人として、森川家の主催する「犯人選考会」に参加することとなった。数百億円とも言われる財産の分け前を獲得するべく、麗子は自らの依頼人を犯人に仕立て上げようと奔走する。一方、麗子は元カノの一人としても軽井沢の屋敷を譲り受けることになっていた。ところが、避暑地を訪れて手続きを行なったその晩、くだんの遺書が保管されていた金庫が盗まれ、栄治の顧問弁護士であった町弁が何者かによって殺害されてしまう――。

元彼の遺言状 | 新川帆立 | 日本の小説・文芸 | Kindleストア | AmazonI(https://www.amazon.co.jp/%E5%85%83%E5%BD%BC%E3%81%AE%E9%81%BA%E8%A8%80%E7%8A%B6-%E6%96%B0%E5%B7%9D%E5%B8%86%E7%AB%8B-ebook/dp/B08QDFG9DN/ref=sr_1_1?adgrpid=138287804761&hvadid=588810116316&hvdev=c&hvqmt=b&hvtargid=kwd-1691607067847&hydadcr=5164_13143944&jp-ad-ap=0&keywords=%E5%85%83%E5%BD%BC%E3%81%AE%E9%81%BA%E8%A8%80%E7%8A%B6+%E5%8D%98%E8%A1%8C%E6%9C%AC&qid=1655728917&sr=8-1)
  • 主人公は敏腕弁護士、バリキャリウーマン、麗子
    お金になるのか、ならないのか。それが彼女にとって最も重要。
  • ある日、麗子の元カレ『栄治』が死んでしまう。
    病死かと思われたが、彼はこんな遺言を残していた。
    「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」
  • 挑む事件の鍵は、一見すると泥々した、一族の昼ドラチックな人間関係。
  • コミカルな登場人物たちのやり取りがテンポ良く物語を前に進めます。
    王道ミステリー!というと安く聞こえてしまうかもしれないですが、面白い!

感想|

ドキドキ スッキリ

麗子の拝金主義

冒頭から、主人公麗子はアクセルベタ踏みである。
彼氏から渡される婚約指輪を彼女は一蹴する。

コレがあなたの気持ちってことね」

麗子は指輪の上に恭しく載せられたダイヤを一瞥してそう言った。
ダイヤの大きさがそのまま相手への気持ちを意味していると、解釈しているからこそ口から飛び出した発言だ。

私に一体いくらかけたのか。

その日のフレンチよりも、彼が麗子を大切に思う気持ちよりも、何よりもそこが彼女にとっては重要なのだ。目の前にあるその石は、一体いくらなのか。

こんな仕打ち、もし自分が受けたなら。泡を吹いて失神してしまうかもしれない。
『 ALWAYS 三丁目の夕日』の小雪が目撃したなら「麗しい?ふざけるな」と吐き捨てて平手打ち、透明の指輪が付けられた薬指での目潰し、のバリューセットをいただきそうである。

そんな応援できない主人公、麗子はこの「お金の為ならどんなことでも」という姿勢が災いして、躓く。

挫折を経て

先述した通り麗子にとっては『お金』こそもっとも信用できるものであり、だからお金にならないことは眼中に無い。しかし麗子は、その考えを痛い形で否定されてしまう。

彼女は悩む。

自分が本当に欲しいものが何なのか分からないから、いたずらにお金を集めてしまうということは、流石の私も分かっている」

彼女は一人告白する。悩んで、悩んで、悩んで、悩む。
そんな中、彼女は自身が弁護士を志した思いを振り返ったとき、自分の『芯』に気付く。お金にならない事であろうと、やってやろう。そうしてまた前に進み始める。

この心理の移ろい方、悪役が改心するときのやつ、そのものである。「俺が間違ってたのかもしれない…」ってやつ。もともと金の亡者スタンスを取っていただけに、尚更その色を感じる。

だから、この辺りから麗子を応援したくなるのかもしれない。

読み終えて

物語が進行するにつれて相棒(?)が変わるという、ちょっと珍しい構成。相棒が代わる毎に麗子の考え方も変化する。

一族間の軋轢は深く、そして複雑に交錯しているように見える点もポイントだ。麗子が一歩踏み込むごとに、全容が明らかになっていく。

そしてなんといっても、「お金より大事なものは無い」という信条を持つ麗子が、その逆の考え方を理解しようとするところ。
「お金より大事なモノ? そんなものあるのなら、見せてみなさいよ!」と、反証を挙げる勢いだが、彼女はただの否定をせずに真正面からぶつかりに行く。そんな風に麗子自身が変わるところも、この物語の魅力である。

あと、登場人物多すぎて混乱してきた時に、一度整理してもらえるのは助かる。ありがとう麗子。

法律が絡むことでとっつきにくくなるかと思いましたが、全然そんなことないです!
個性的な登場人物の掛け合いと、先の読めない展開のお陰であっという間に読了しました。是非!

タイトル、カッコええな…。

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