あらすじ|
僕たちは双子で、僕たちは不運で、
だけど僕たちは、手強い双子の兄弟が織りなす、「闘いと再生」の物語
常盤優我は仙台市内のファミレスで一人の男に語り出す。
双子の弟・風我のこと、幸せでなかった子供時代のこと、そして、彼ら兄弟だけの、
誕生日にだけ起きる不思議な現象、「アレ」のこと――。ふたりは大切な人々と出会い、特別な能力を武器に、邪悪な存在に立ち向かおうとするが……。
フーガはユーガ|実業之日本社 (j-n.co.jp)(https://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-55688-8)
- 主人公は優我と風我。
彼らは双子で、彼らにはある条件で発動する超能力がありました。
(ただし、少し地味) - この超能力がもちろんミソなのですが、そこに加わる彼らのクレバーさ、ツよいんです、、!
- 目立たずにキメていく、これがかっこいいんです。
ダークヒーローが活躍する感じに近いのかしら、とも思いましたが、それにはちょっと違和感を感じます。
そうです、ちょっと変わった双子なだけなのです、、 - なんといってもこの読後感。
シンプルなハッピーエンドに飽きた方、ぜひ味わってください!
感想|
ドキドキ しんみり じんわり
テレビ編集者『高杉』と向き合う一人の男『優雅』。
話題は『一本の動画』。
過去を、優雅は振り返りながら話始めます。
上手にドライ
風雅と優雅が身を置く家庭環境は、劣悪そのものです。
ニュースでも時々話題になるような、そんな家庭。聞く度に心がざわついて、針でも突き立てられたように痛む、荒れた家庭です。二人は耐えます。
GANTZ読んでる人には伝わりますかね、、タケシの親みたいな、そんな環境です…
書いてるだけでも胸クソです…
こんな環境、いくらでも重たく暗く、描くことが出来そうなものですが、そうならないんです。
それは、風雅と優雅のどこか達観した調子が、場面に似つかわしくない、不自然とも言える軽やかなテンポを生み出しているんです。
激烈な家庭環境と軽やかな語り口、普通は共存できないはず。しかし、物語が進行する上での違和感が全く無いんです。
成立させているのは二人の生きる力の強さ(二人だからこその強さ)がキチンと描かれているから、ではないでしょうか。素朴で、暴力的ではない、強さ。この二人が持つ魅力です。
情けは暇の為である
おそらく、優雅と風雅に座右の銘を聞けば、こう返って来るのではないでしょうか(勝手)。
また、これは僕が『情けは人の為ならず』に強引に当て込みたいがために、この表現選びましたが、情けというよりは『手助け』という方がマッチするでしょう。手助けは暇の為である。
二人は暇をつぶす為、無意味に他人にお節介を焼くのが趣味でした。
このスタンスがまた、くどく無くって良いんです。見返りを求めてはいなくて、ただ暇だから手を出す。
そこには照れ隠しがあるのかもしれませんが
なんにせよ、その姿勢が良いです。
普段、例えば仕事なんかは特に、損得勘定が親切心を追い越しがちです。
「あの時助けてあげたのに」
「先日良くしてもらったから、今回は顔を立てておこう」
自分自身、ただの親切心のつもりでも、心のどこかで、その人に対しての『貸しカウント』をつけてしまうものです。そうゆう事は多いです。
なので、何にも考えずにただ人を助けるというのは案外難しい事のような気がしていて。でも、そんなことをサラッと、二人はやっちゃいます。
終盤に畳みかけるストーリー展開
物語は終始、優雅が淡々と過去を語るシーンが続きます。
その一つ一つが重なって積みあがったものを最後に眺めた時、それぞれの場面、ピースが持っていた意味が分かってきます。終盤に畳みかけてくるんです。
そうして、読み終わった後にじんわりと広がる、この感じ。
切ない、と言い切るのはまた違って、『エモい』感じ。
急に曖昧で安い感じが滲んでしまいますが、、じわっと、寂しさとか色々が心に沁みるこの感じを、表現する引き出しがまだ、僕の中にはありませんでした。
この味わいが広がる感じ、ぜひ体験してほしいです。
ネタバレにならないように、と言うことを気にするあまり、随分ぼんやりとした書き方になってしまった、、おもしろかった!
また違った角度で、親子関係を語ったお話もおいておきます。同じく伊坂作品。
こっちは、明るい感じです
ぜひ(‘ω’)ノ