あらすじ|
元薬物研究員が勤務地の近くで肉と骨の姿で発見された。埼玉県警の槇畑は捜査を開始。だが会社は二ヶ月前に閉鎖され、社員も行方が知れない。同時に嬰児誘拐と、繁華街での日本刀による無差別殺人が起こった。真面目な研究員は何故、無惨な姿に成り果てたのか。それぞれの事件は繫がりを見せながら、恐怖と驚愕のラストへなだれ込んでいく……。
魔女は甦る | 中山七里 | 日本の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon
- 主人公は働き盛りの男性刑事、槇畑 彼は優秀で周囲からの信頼も厚いが、被害者に同情しやすいという欠点があった
- 物語は惨殺事件が起きた現場から始まる この事件が物語の軸に
- ミステリー好きは興奮出来る内容かと、、!
ただし、スッキリ爽快!という読後感ではないのでご注意を、、
感想|
ドキドキ ハラハラ 衝撃 ずーん
劇薬
思わず息が浅くなる衝撃の連続。エッジが立ちまくったシーンの連続。こんな書き方をすると、洋画アクションのようだが、違う。意味の無い爆発シーンは無い。全部みぞおちボディブロー。そりゃ、呼吸が辛くなるわけで。
凄まじい爆風が全員に当たる
主要メンバーの多くに凄まじい爆風が当てられる。比喩だけど、特に主人公をこんなに追い込むのは、簡単に出来ることでは無いように思う。因果応報的な側面がある事を踏まえても、あまりに激しい引っ返し。
その中でも、最も激しく爆風を浴びるキーパーソン、桐生。彼は自身を「魔女の末裔」と自嘲するのだが、それがタイトルに繋がっているわけである。
そもそも魔女とは何か。
ーー 魔女(まじょ)とは、古いヨーロッパの俗信で、超自然的な力で人畜に害を及ぼすとされた人間、または妖術を行使する者のことを指す。15世紀から17世紀にかけてのヨーロッパ諸国において、多くの人々が魔女の嫌疑をかけられ、世俗の裁判や宗教裁判によって処断された。
引用:Wikipedia 魔女(魔女 – Wikipedia)
『世間から害をなすと断ざれてしまい、迫害を受けた人々』
ここでは、僕はそう理解した。
桐生の発言の真意
彼はもういない、だから答えは分からない。
しかし、物語の中では槇畑、美里による二つの解釈が披露される。あなたはどちらの解釈をしただろうか。僕は、、あえて具体的には書かないが、取返しのつかない状態になってしまったことに対する「悲しみ、後悔」という思いから、彼は発言した。
そうであって欲しいと願っている。
しかし、タイトルの真意も並行して考えてみると「魔女は甦る」わけで、それはつまり、、
と、この辺にしておく。
ラストシーン
この物語は最後、読者にボールを投げる。
どんな風にでも受け取ることが出来てしまう。もちろん答えは無い。でも、「もう片方の目に突き刺さったから」などと、簡単に片づけられるものでもないはずだ。
個人的には、この辺りもタイトルと絡み合っているのかな、なんて思っている。そうとするならば、「魔女」の指し示すところは一個人ではなくなるが、そうだとも断言できない。
前述したとおり、彼が自責の念を抱いていたのか、それとも確信犯的な執念を燃やしていたのかは分からないから…
読み終えて
ほんまに壮絶な展開の連続です。ひさびさに心拍数が変わった感覚に落ちました。
このハフハフ感というのか、終盤、テンポの良さとドラマチックさとが相まって、途中字面をなめてるだけの瞬間もありました。乗り過ごしそうな電車に、なんとか間に合った時みたいな疲労感。そして読み終わった後のこの脱力感。只事ちゃいますね。面白かった!
最後に、物語には全然関係ないですが、作中美里の一言を引っ張ってきて終わりにしたいと思います。
「どんな本を読んでどんな感銘を受けたかなんて、自己顕示欲の余程強い人しか口に出さないものでしよ」
はい、気をつけます。。